子宮内膜症の定義と概念
子宮内膜様組織が本来の正常な位置、すなわち子宮腔内面以外の組織や臓器などに、 異所性に存在し増生するために生じる病態。
発生部位により子宮筋層内に発生する内性子宮内膜症と、子宮外の組織や臓器に発生する外性子宮内膜症に分けられる。
両者は別の疾患として捉えられており、前者→子宮腺筋症 (adenomyosis)とよばれる。
発生と増殖の過程には性ステロイドホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が大きく関与。
生殖年齢層にある女性の5~10%に発生。
わが国においては約12万人の女性が子宮内膜症の診断で治療を受け、100万人以上の罹患者がいると推定されている。
発生頻度は近年増加傾向にあり、女性の晩婚化と出産年齢の高齢化、妊娠・分娩回数の減少に伴う月経回数の増加などがその理由。
月経異常を主訴とする症例の22%に、月経痛を主訴とする症例の15%に、子宮腺筋症が組織学的に認められたと報告あり。
“子宮内膜症取扱い規約”では、組織学的に診断が容易である定型的子宮内膜症と、診断が困難な場合もある非定型的子宮内膜症に分けられている。
定型的子宮内膜症
子宮内膜の基本構造である上皮細胞と間質細胞の両成分が観察される。
月経周期に伴う出血が病巣に起った場合には、腺腔内出血、周囲間質の出血、血性色素(ヘモジデリン)沈着、色素貧食マクロファージの出現などの所見が見られる。
非定型的子宮内膜症
上皮細胞が欠乏・欠如する場合、間質細胞が欠乏・欠如する場合、さらに両成分がほとんど認められない場合があり、古い病巣やチョコレート嚢胞などに多い。
子宮腺筋症の組織所見
子宮内膜症と同様であるが、子宮内膜組織が正常筋層内に孤立性・散在性に認められる。
子宮腺筋症で見られる異所性内膜組織は、卵巣周期による内分泌学的変化を受けることが少なく、子宮内膜症で見られる出血やへモジデリン沈着の所見はないことが多い。
しかし、正所の子宮内膜と同様に月経周期による出血を繰り返し、adenomyotic cystと呼ばれる血液を容れた嚢胞様の腫瘤を子宮筋層内に形成することがあり、画像診断上重要な病変の一つである。