子宮腺筋症(adenomyosis)とは
- 子宮内膜組織の子宮筋層内での異所性増殖と周囲の平滑筋過形成。
- 性成熟期女性の20-30%。40-50歳代の経産婦に多い。
子宮腺筋症の画像所見
- 異所性内膜組織の周囲に平滑筋の増殖を伴い、この平滑筋を反映して、junctional
zoneと連続し境界不明瞭なT2強調像で筋層より低信号となる。
- 結果、内膜筋層境界(junctional zone;JZ)が不整にみえ、JZの肥厚(>12mm)を認め
る。
- 増殖した内膜腺はT2強調像で点状の高信号。
- 脂肪抑制T1強調像で高信号の点状出血が散見される。出血は目立たないこともあ
る。
- 微小なスポットが多発している状態はSwiss cheese appearanceとも呼ばれる。
- 異所性内膜自体には、正常内膜と同様の造影効果が認められる。
- 平衡相では、子宮筋層よりもやや弱い造影効果となるものが多い。
症例 40歳代女性
子宮は前壁優位に肥厚を認め、junctional zoneの不明瞭化あり。
筋層内にT2WIにて点状の高信号が散見され、一部は脂肪抑制T1WIで高信号を示しており、点状出血を伴っている
子宮腺筋症を疑う所見。
また前壁筋層内には子宮筋腫もあり。
症例 40歳代女性 CTで子宮腫大を指摘。
子宮は後壁優位に肥厚を認め、junctional zoneの不明瞭化あり。
筋層内にT2WIにて点状の高信号が散見され、子宮腺筋症を疑う所見。
脂肪抑制T1WIで高信号は認めない。
症例 40歳代女性
子宮は後壁優位に肥厚を認め、junctional zoneの不明瞭化あり。
筋層内に脂肪抑制T1WIにて点状の高信号が散見され、子宮腺筋症を疑う所見。
junctional zone
- junctional zone>12mmとすると子宮腺筋症の診断能が最も高い。
- このjunctional zoneの肥厚は、全周性に分布するものから、非対称な分布により正常なjunctional zoneと病変が共存する場合、筋層腫大が明瞭な場合、不明瞭な場合とさまざま。
- 組織学的には子宮内膜基底膜に類似するからために腺筋症内の出血は小さい点状
を呈するとされる。
- 月経周期に応じた変化は正常子宮内膜とは異なり、出血やヘモジデリン沈着は目
立たない。この点は、異所性内膜が子宮内膜機能層に類似しており、月経周期に応じた出血が顕著で、大きな嚢胞を形成するのとは対照的!
子宮筋腫と子宮腺筋症のMRI所見の比較
子宮筋腫 | 子宮腺筋症 | |
---|---|---|
T2WI | 低信号 | 低信号 |
境界 | 明瞭 | 不明瞭 |
変性 | さまざまな形態の高信号域 | なし |
異所性内膜 | なし | 点状高信号域 |
flow void sign | あり | なし |
※子宮筋腫周囲には、拡張した血管によるsignal voidがしばしば認められる(flow void sign)。筋腫が大きくなるにつれて頻度は高くなり、5cm以上で43%、7cm以上で85%に認められたと報告あり。(J Magn Reson lmaging8:427-431, 1998. )
なぜ両者を鑑別することが重要か?
- 子宮腺筋症は、良性とはいえ浸潤性増殖を来すため、核出することが基本的にで
きない。なので、手術としては、単純子宮全摘術が行なわれることになる。
- 一方子宮筋腫は核出術が可能。
→妊孕性温存、子宮温存の観点から両者の鑑別は重要。
良悪性の鑑別が問題となる腺筋症
- T2WIにて高信号:豊富な腺成分、浮腫、脱落膜化。
- 内膜のpseudo-widening:内膜基底層が筋層へ浸潤し、内膜-筋層境界が不明瞭化
し、あたかも内腔が拡大したような像を呈すること。
- 出血が目立つ症例。
- 嚢性腺筋症(筋層内の内膜症性嚢胞)(adenomyotic cyst=cystic adenomyosis)。
※子宮外の内膜症性のう胞などと異なり、腺筋症内の異所性粘膜は血性ののう胞を形成しにくいが時に形成することがあり、これを嚢性腺筋症という。
- ポリープ状腺筋腫/異型ポリープ状腺筋腫
鑑別診断=子宮筋層を主座とする内部不均一な腫瘤
- 変性子宮筋腫
- 平滑筋肉腫
- 子宮腺筋症に合併した悪性腫瘍(類内膜腺癌など)
- 子宮内膜間質肉腫
- 子宮収縮